相続における「事業承継」海外在住者が抑えておきたいポイント

前回は、日本で相続が発生し、相続財産に農地があった場合の手続きなどを紹介しました。今回は、海外に居住されたまま、または帰国して親族の方やその他の事業を引き継ぐ「事業承継」にスポットを当てます。

現在の日本においては、企業数の99%、従業員数においては約70%が中小企業という統計が出ています。しかしながら、少子高齢化の日本では、多くの中小企業における課題として、その経営者の高齢化と後継者不足が挙げられるようになっています。

事業承継プロジェクト

事業継承にはその課題と向き合うために、5年、10年という時間をかけて後継者の育成や資産の移動、技術の伝承など計画を策定し、下記の「事業承継」をプロジェクトとして実行することが求められます。

  1. 経営の承継
  2. 財産の承継
  3. 無形財産の承継

1、2には目を向けていても、3は見逃されがちです。経営理念、人脈、ノウハウ、許認可など、いずれも承継者の理解や準備に時間をかけられるよう、親族内で話し合いが可能であれば、現経営者の方に働きかけることも必要かもしれません。複数の専門家に相談しながら、一大プロジェクトとして事業承継を計画することをお勧めします。

予備的事業承継

経営者に万が一のことがあったとき、事業が停止してしまったり、親族内で争いが起こる可能性があります。このリスクを避けるためには、経営者は事業が継続できるように、株、事業資産、経営の永続性といった広い視野で、遺言を作っておくことが肝心です。この場合は公正証書遺言が良いのではないでしょうか。承継者からは切り出しにくいかもしれませんが、ぜひ進言してみてください。

事業承継で注意すること「許認可」

一口に許認可といっても主に、許可、認可、認証、登録などそれぞれに取得の難易度や求められる要件(ヒト、モノ、カネ)が異なります。

  • 飲食店営業許可
  • 建設業許可
  • 宅建業許可
  • 医療法人設立認可
  • 特定非営利活動法人設立認証
  • 電気工事業登録

など、多岐にわたります。

出来ることならまずは事前に承継する会社や事業においてどんな許認可が必要なのかを把握しておくことが大切です。

親族の方からの承継なら、税金や経営権の問題も重要ですが、前もって許認可の有無、種類を確認しておけると良いでしょう。

経営者や管理者の要件

多くの許認可が、経営者が代わることで再度許可申請が必要となったり、変更の届出が必要となります。有効期限があり、数年で更新が必要となる許認可もあります。

例えば建設業許可では、経営管理責任者、専任技術者という特定の資格や経営経験を持つヒトの専任が要件となり、親族の不幸などで急に承継をすることになってもその時点で特定の資格や経営経験を持っていないと、資格者や経験者を雇わなければ事業が存続できない、などという事になりかねません。

海外に居住されている場合、常勤が求められる許認可業種においては要件を満たさないこととなる可能性が非常に高いです。
事業を継続させるにはご自身が帰国されるのか、従業員の方で常勤性を満たしつつ経営に参画するのかを選択することとなります。

その他にも、資産、場所(本店や営業所)など、それぞれの許認可の要件を現状満たしているのか、承継後も満たすことができるのか、準備出来ることはなるべく早い段階で確認しておきましょう。

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