本帰国に向けてのアメリカの不動産売却準備 〜知って得するステップガイド

将来日本への本帰国をお考えの方でアメリカに不動産を所有されている方々は、まず何からどのように準備を始めたら良いのか?とお悩みになると思います。

本帰国に際しては、アメリカにお持ちの不動産の扱いに合わせて以下のような疑問が出てくるのではないでしょうか?

  • 所有している不動産を売却する?しない?
  • 日本で住処を探すタイミングは?
  • アメリカの銀行口座、投資口座の扱いは?
  • アメリカに居る間に送金すべきお金は?
  • 日本から送金依頼が出来るのか?
  • 年金、投資口座に関わる税金は?いつ現金化するの?
  • ソーシャルセキュリティの受給手続き
  • 市民権、永住権を維持するのか?それとも放棄するのか?それによる税金に関わる影響は?

考えなければならないことがたくさんありますね。不動産の売却と一口に言っても、それだけにフォーカスするのではなく、不動産に関わる手続きの全体像を把握、理解されてから売却をすることをお勧めいたします。

本帰国における不動産売却時に起こり得る問題も含めながら、不動産エージェントとして今まで携わった案件、その際にお客様から出たご質問等を元にご説明していきたいと思います。

本帰国に向けたアメリカ不動産売却の準備 ステップガイド

1)まず本帰国をされる予定時期の少なくとも6ヶ月前から準備を開始される事をお勧めいたします。

不動産をお持ちで将来売却する予定の方は、帰国前に売却する方が税務上望ましいと考えられるからです。(専門家のアドバイスが必要です)

2)アメリカに所有する不動産を賃貸として残すのか?それとも売却するのか?を決定する。

”売却”をご決定の場合は一般的に税務上その年の12月までにご売却されるのが望ましいと言われています。

3)不動産売却に関しては日米を跨ぐ税務に精通している専門家とのネットワークを持つ、信頼できる”不動産エージェントの選択” が鍵となります。それにより本帰国計画の過程がスムーズに進む可能性が高くなり節税にも繋がります。

4)各分野の専門家(税理士、エステートプランニングの弁護士、不動産エージェント)のアドバイスを受け、不動産の売却時期を決定する。

5)不動産売却の準備を開始する。

  • 不動産エージェントとのリスティング契約を結ぶ
  • 家の片付け、売却の為のステージングの方法をエージェントと話し合う
  • 修理が必要な箇所をエージェントと話し合う
  • 物件の写真撮影
  • 物件の売出し価格を決める(リスティング価格)

6)売却手続き〜完了までのプロセス

  • 不動産をマーケットに出す
  • ショーイング(内覧)開始(ロックボックス設置)
  • オファー(買付申込み)が入る。価格、条件等の交渉
  • 売り手、買い手の合意の下、交渉が完了、売買契約が成立
  • クロージング(期間:平均約2週間から30日間)に向けて、売り手による物件情報の開示、買い手による物件のインスペクション
  • 様々なインスペクションの後、買い手が購入を継続するかどうかの意思決定をする。
  • 買い手による最終残金の支払い
  • エスクロー(CA州)のクロージング(他州では弁護士がクロージングを担うところも有り)
  • 売却成立(登記登録完了)鍵の引渡し

  *不動産を市場に出してから登記登録完了までに要する期間は平均2ヶ月〜3ヶ月(それぞれの地域の市場の動向によって異なります)

7)帰国前に日米それぞれの側で発生する税務問題を理解しその対策、準備を行う。

帰国前に売却した方が有利?:キャピタルゲイン税

1)米国居住者のうちに*ご自宅を売却すると、不動産に関わるキャピタルゲイン税(売却益に掛かる税)控除の特権が使える。

1人での申告:$250,000まで
 夫婦合算申告:$500,000まで

キャピタルゲイン=売却価格 ー(不動産購入価格 +(修理+リノベーションの費用)*領収書要
課税対象=キャピタルゲイン ー $250,000/$500,000(控除)

 *投資物件の場合のキャピタルゲイン税の優遇措置は異なります。

2)ご自宅を帰国後に売却すると?

アメリカ非居住者(日本の居住者になった時点から)キャピタルゲイン税控除の適用が無くなる。つまりキャピタルゲイン(売却益)全額が課税対象となります。

その他の資産について

アメリカに所有されている財産としては、不動産に加えて銀行口座、証券口座、生命保険、年金口座などが挙げられると思います。

1)401k, IRAなどの課税を認識するため専門家に相談する事をお勧めします。相続税、贈与税に関してはアメリカ居住者か非居住者かによって大きな差が出る場合もあります。

2)米国ソーシャルセキュリティ

申請手続きは2通りですが、本帰国前に問い合わせや出来得る手続きを済ませておく事をお勧めいたします。

  • 帰国前:SSオフィスの受給申請(振込み)手続き
  • 帰国後:駐日米国大使館へ問い合わせ

アメリカに残すお金の管理

アメリカの口座に残すお金の管理は、引き上げのタイミングが難しいと思われます。帰国後は特に信頼できる方(専門家)に任せて資産を大切に守る必要がありますね。ではどういう資産を残すのか?また解約する場合はそのタイミングが重要になってきます。

1)不動産売却後に売却益を日本へ送金する。
不動産エージェント、税理士、エステートプランニングの弁護士の連携により送金のタイミングを見計らいながら、お客様の日本の銀行口座へ送金をする。それによりスムーズに手続きが進み、最終的に税務上も有利となる可能性が高くなる。

2)銀行口座、IRA、投資用口座など
*特にRoth IRAをお持ちの方は帰国前に税理士、エステートプランニング専門の弁護士にご相談することをお勧めします。

日本での住処を探すステップ

日本での住処を決めるのも一苦労だと思います。
本帰国の時期を決めたら次のステップでお探しになると比較的スムーズに進むでしょう。

1)⓵帰国前に日本の住処を探すのか?それとも⓶帰国後に探すのかを決める。

2)⓵の場合:一時帰国をして日本の住処を探し、契約を済ませる。
  持ち家のある方は、テナントに提出する退去通知の時期を決める。

  その後アメリカに帰国し不動産を売却してから、日本に本帰国する。

  既に日本での住処が決まっている場合には引越し、住民票の取得手続きなどを速やかに行うことができる。
  
3)⓶の場合:日本への一時帰国が困難である場合あるいは時間をかけて住む場所を決めたい場合には、アメリカの不動産を売却後に本帰国をして仮の住まい(ホテルなど)に住みながら定住する場所を探す。時間をかけて場所の選択が出来るという利点がある。

以上、本帰国をお考えの多くの方々が持たれるであろう疑問や不安事項についての対処、準備の方法をお話しいたしました。

最後に

不動産の売却を含む帰国の準備を進めるにあたっては、信頼できる各分野の専門家と連携をはかり、ご自身にとって最善の方法を選択することが重要です。

そのためには、それぞれの専門家に個別に相談するだけでなく、

  • 信頼できる経験豊富な不動産エージェントにご相談され、日米を跨ぐ税務に精通されている専門家を紹介してもらう。
  • もしくは税理士、エステートプランニング専門の弁護士に先にご相談されてから、不動産エージェントを紹介してもらう。

といった方法をとることで、効率良く準備が進められるでしょう。

繰り返しになりますが、本帰国の予定日が決まった際には、少なくとも6ヶ月前くらいから準備を始め、余裕を持った計画、準備をすることが望ましいと思います。

次回の記事では、本帰国に向けた不動産売却にあたって考慮するべきポイントをおまとめします。こちらとあわせてご活用ください。

*免責事項:上記の内容はあくまで不動産エージェントとしてのアドバイスであり、法的なアドバイスではございません。具体的な相続、税務面に関してのご質問は、専門家である税理士またはエステートプランニング専門の弁護士にご相談される事をお勧めいたします。

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